法定相続分と法定相続人,どちらが間違い?

 法定相続分というのは,法律で定められた相続分の意味であり,法定相続人というのは,法律で定められた相続人の意味です。

 実は,法定相続分という用語も,法定相続人という用語も,民法には書かれていない用語なのです。
 民法では,相続分,相続人としてしか書かれていません。

 では何故,法定相続分という用語が使われるのでしょうか。
 理由は,相続分には,遺言により指定された相続分と,法律で決められた相続分の二つがあるために,前者を「指定相続分」,後者を「法定相続分」という用語を用いて区別しているのです。

 一方,相続人についてですが,これは法律で定められた相続人以外に相続人はいません。
 したがって,相続人に関しては,相続人という用語だけで足りるのです。
 それでも,法定相続人という用語はよく使われています。

 一般に,法律で定めたものだから法定という用語が常に使われるわけではないことは,遺留分という場合に,法定遺留分という言い方をしないことからもお分かりいただけると思われます。

 相続人に関してだけ,わざわざ,法定相続人という用語を使うのは,「法定相続分」が使われることからの連想と思われます。