自転車に乗って道路工事の現場にさしかかったとき,道路の段差のため,転倒して怪我をしました。この場合,工事会社や道路管理者の責任はないの?

下記3つの判例は,いずれも工事中の道路で起こった転倒事故に関するものです。

(1) 大阪地判平成11年1月14日は,工事の際に設置された鉄板と路面との段差が1.2センチあり,この段差にタイヤを取られ原付自転車が転倒した事案で,1.2センチ程度の段差は通常の道路でも頻繁にみられること,工事中であることが容易に分かること,保安灯等の明かりがあり,また原付の前照灯を転倒していたので,段差を容易に発見できたこと,過去に類似の事故はないことなどを理由に,工事会社の責任,道路管理者の責任とも否定しました。

(2) 東京地判平成9年9月25日は,工事の際に設置された鉄板と道路の間に2,3センチの段差がありハンドルを取られ自転車が転倒した事案で,鉄板を設置した工事会社の責任は認め(ただし,被害者が自転車の前照灯を点灯しており,相応の注意を払っていれば段差を発見し回避することは容易であったことを理由に,30パーセントの過失相殺を認めています),道路の管理者である東京都については,間接的な管理者に過ぎないこと,2,3センチ程度の段差は比較的わずかであること等を理由に損害賠償責任を否定しています。

(3) 東京地判昭和48年11月29日は,国道に縦断状に6センチの段差があり,この段差のため転倒し原付の運転手が死亡した事案で,段差の存在する場所が明確でなく,道路標識等からも段差を察知することができなかったことを理由に,損害賠償責任を認めています(ただし,被害者が飲酒運転をしていたこと,徐行運転をし前方注視を怠らずに運転していれば段差を回避できた蓋然性が高いことを理由に70パーセントの過失相殺をしています)。

質問に対する結論は,道路の状況次第ということになります。