それは,最高裁判所が,平成18年3月28日,ある保険金請求の事件で,被害者勝訴の判断をした事案のことです。
争点となったのは,父が損害保険会社との間で結んだ「自家用自動車総合保険契約」の「無保険車傷害条項」の解釈です。
自家用自動車総合保険契約の無保険車傷害条項によれば,保険会社は,加害者側に損害賠償義務者があるが,加害車両が任意保険に入っていない場合に,交通事故で,記名被保険者や,その同居の親族の生命が害されたり,後遺障害が生じたときは,保険金を支払うことになっているのですが,この事案では,父の車を運転していた母のお腹に宿っている胎児は,記名被保険者と同居する親族とみなすことができると判示したものです。
この結果,最高裁判所は,保険会社に対し保険金約1億4000万円の支払いを命じた2審・名古屋高裁金沢支部判決を支持する判決を下したものです。
この裁判で,最高裁判所は,「本件約款の定めによると,無保険車傷害条項に基づいて支払われる保険金は,法律上損害賠償の請求権があるが,相手自動車が無保険自動車であって,十分な損害のてん補を受けることができないおそれがある場合に支払われるものであって,賠償義務者に代わって損害をてん補するという性格を有するものというべきであるから,本件保険契約は,賠償義務者が賠償義務を負う損害はすべて保険金によるてん補の対象となる(ただし,免責事由があるときはてん補されない。)との意思で締結されたものと解するのが相当である。」と判示しております。